介護離職する前に確認したい制度・相談先・会社への伝え方

「もう、仕事を辞めるしかないのかもしれない…」

親御さんから夜中に電話がかかってくる。病院や役所からは、平日の昼間に連絡が入る。仕事中も何か起きていないか気になり、休みの日は通院や買い物で終わってしまう。

これまで何とか両立してきた方ほど、周囲へ迷惑をかけたくないと、一人で抱えていらっしゃることと思います。会社へ話せば評価が下がるのではないか。何度も休むくらいなら、先に辞めたほうがよいのではないか。そんな考えが頭を離れなくなることもありますよね。

けれど、退職届を出したあとでは、今の職場で使えた制度へ戻ることが難しくなります。

今すぐ退職すると決めなくても大丈夫です。まず会社へ「仕事を続けたい」と伝え、地域包括支援センターやケアマネジャーには「働き続けるための介護体制を作りたい」と相談してみませんか。

このページでは、介護離職を決める前に確認したい制度、相談する順番、会社へどこまで話せばよいのかを、一つずつご案内します。事情をすべて説明できなくても、今分かっていることから始められます。

目次

介護離職を決める前に、先に二か所へ相談する

仕事と介護の問題は、会社だけでも、家族だけでも解決しにくいものです。相談先を次の二つに分けると、話す内容が整理しやすくなります。

相談先相談すること目指す状態
会社の人事・労務・上司休業、休暇、勤務時間、残業、テレワークなど仕事を続けられる勤務条件を作る
地域包括支援センター・ケアマネジャー介護認定、介護サービス、通院、見守り、緊急時対応家族だけで抱えない介護体制を作る

会社には介護サービスの手配を頼めません。一方、ケアマネジャーには勤務時間の変更を決めてもらえません。二か所へ同時に相談し、「どの時間なら家族以外へ任せられるか」「どの働き方なら勤務を続けられるか」を組み合わせます。

介護休業は、93日間ずっとご自身だけで介護するための制度ではありません。厚生労働省も、仕事と介護を両立できる体制を整えるための準備期間として活用するよう案内しています。

2025年4月から、会社には制度の個別周知と意向確認が求められている

2025年4月1日から、介護に直面したことを申し出た労働者に対し、事業主が介護休業や両立支援制度を個別に知らせ、利用する意向を確認することが義務になりました。企業規模を問わず対象です。

  • 介護休業と介護両立支援制度の内容
  • 社内の申出先
  • 介護休業給付に関する情報

会社は、制度利用を控えさせるような説明をしてはいけません。また、介護休業などを申し出たことや利用したことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いも禁止されています。

ただし、会社がご家族の状況を知らなければ、個別の説明を始められません。「まだ介護認定が出ていないから」「詳しい状態が決まっていないから」と待たず、介護に直面していることだけでも早めに申し出ることが大切です。

退職前に確認したい主な両立支援制度

一つの制度ですべてを解決しようとせず、介護が始まった直後、通院日、日々の勤務という場面ごとに使い分けます。

制度主な使い方法律上の概要
介護休業介護体制を整える、施設・サービスを探す対象家族1人につき通算93日、3回まで分割
介護休暇通院同行、手続き、ケアマネジャーとの打合せ対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日。1日または時間単位
所定外労働の制限残業を免除してもらう請求により、介護終了まで利用可能
時間外労働の制限法定時間外労働を抑える月24時間・年150時間を超える時間外労働を制限
深夜業の制限夜間の勤務を避ける午後10時から午前5時までの勤務を制限
短時間勤務等の措置勤務時間を短くする、時差出勤など利用開始から3年以上の期間で2回以上利用できる措置を会社が用意

対象となる労働者の要件、申出期限、賃金の扱いは制度ごとに異なります。法律を上回る独自制度を設けている会社もあるため、就業規則と人事・労務の案内を確認してください。制度の違いは、介護休業・介護休暇・短時間勤務の違いでも詳しく整理しています。

介護休業は「今後の介護を回す仕組み」を作る時間

対象家族1人につき、通算93日までを3回に分けて取得できます。たとえば、入院直後、退院時、在宅介護から施設介護へ移る時期に分ける方法があります。

  • 要介護認定の申請や更新を進める
  • ケアマネジャーとケアプランを相談する
  • デイサービスや訪問介護を試す
  • 家族間の連絡方法と担当を決める
  • 急変時に誰がどこへ連絡するか決める
  • 職場復帰後の勤務条件を会社と調整する

休業期間のすべてをご自身の介護時間へ変えてしまうと、復職した日に同じ問題へ戻ってしまいます。休業後にご自身が仕事へ戻ることを前提に、家族以外の支援を組み込みます。

介護休暇は、単発の通院や手続きに使う

対象家族が1人なら年5日、2人以上なら年10日まで、1日または時間単位で取得できます。通院の付き添い、介護サービスの手続き、ケアマネジャーとの短い打合せなど、まとまった休業を取るほどではない用事に使いやすい制度です。

2025年4月から、継続雇用期間6か月未満であることを理由に、労使協定で介護休暇の対象から除外する仕組みは廃止されました。週の所定労働日数が2日以下の労働者は、労使協定による除外対象となる場合があります。

介護休業中の収入は、介護休業給付を確認する

介護休業中に会社から賃金が出るかどうかは、勤務先の規程によって異なります。雇用保険の被保険者で一定の要件を満たす方には、介護休業給付金が支給されます。

給付額は原則として「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」です。厚生労働省の例では、休業前の平均月額が20万円程度で、介護休業期間を対象とする賃金が支払われない場合、支給額は月13.4万円程度とされています。

  • 休業開始前2年間に、原則として被保険者期間が12か月以上必要
  • 申請は原則として事業主を経由する
  • 休業中に賃金が支払われると減額・不支給になる場合がある
  • 給付額には上限があり、金額は改定される
  • 介護休業中も、育児休業と異なり社会保険料の免除はない

手取りがどのくらい変わるかを確認せずに休業へ入ると、生活費の不安が大きくなります。人事・労務には会社から支払われる賃金と社会保険料、ハローワークには介護休業給付の支給要件を確認しましょう。

会社へ相談する前に、分かる範囲で5つだけ整理する

介護の見通しが立ってから相談しようとしても、介護は予定通りに進みません。診断名や介護度が確定していなくても、今起きている仕事への影響を整理すれば相談できます。

  1. 誰の介護か:親、配偶者、祖父母など
  2. 今起きていること:通院、入院、見守り、電話対応など
  3. 仕事への影響:遅刻、早退、残業困難、急な休みなど
  4. 続けたい働き方:職種、勤務日数、希望する時間帯
  5. まず相談したい制度:休暇、休業、残業免除、短時間勤務など

ご家族の病歴、収入、家庭内の対立まで、すべてを上司へ話す必要はありません。会社が勤務上の配慮と制度利用を判断するために必要な範囲で伝えます。

会社へ「退職ではなく継続勤務を希望している」と伝える

最初の相談で「もう無理です」「辞めるかもしれません」とだけ伝えると、退職の相談として受け取られることがあります。先に、仕事を続けたい意思と、困っている勤務条件を伝えます。

親の介護が必要になり、現在は月2回の通院同行と、平日日中の急な連絡が発生しています。できれば退職せず、仕事を続けたいと考えております。利用できる介護休暇、残業免除、短時間勤務等の制度と、社内の申出手続きをご相談させていただけますでしょうか。

まだ必要な期間が分からない場合は、分からないと伝えて構いません。「まず2週間、残業を外していただき、その間に介護認定とサービス調整を進めたい」と、短い期間で見直す方法もあります。

上司へ話しにくいときのメール例

お疲れさまです。家族の介護と今後の勤務について、個別にご相談したいことがございます。現時点では退職ではなく、制度を利用しながら勤務を継続したいと考えております。人事ご担当者を含め、30分ほどお時間をいただくことは可能でしょうか。家族の個人情報を含むため、可能であれば個室またはオンラインでお願いできますと幸いです。

相談後は、利用できる制度、申出先、必要書類、開始日、賃金の扱いをメールや書面でも確認します。口頭の約束だけにしないことで、上司や担当者が変わった場合にも経緯を残せます。

地域包括支援センターには「働き続けたい」と伝える

地域包括支援センターは、すべての市町村に設置されている介護の総合相談窓口です。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどが連携して相談に応じます。介護認定を受けていない段階でも、どこへ相談すればよいか分からない段階でも利用できます。

「利用できるサービスを教えてください」だけでなく、ご自身の勤務条件も伝えてください。

  • 出勤・退勤時刻と通勤時間
  • 残業や夜勤の有無
  • 週に休める曜日
  • 電話へ対応しにくい時間
  • 会社で利用できそうな休暇・休業
  • 家族の中で担当できる人と時間

平日は8時から18時まで自宅を空けます。退職せず勤務を続けたいのですが、日中の服薬確認と食事、急変時の連絡が心配です。介護認定の申請と、利用できる訪問・通所サービスについて相談したいです。

「自分ができる介護」からサービスを考えるのではなく、「仕事を続けるには、どの時間を家族以外へ任せる必要があるか」から体制を考えます。

家族会議では、気持ちより先に担当と限界を確認する

きょうだいから「近くに住んでいる人が見ればよい」「仕事は休めない」と言われると、話し合うこと自体が苦しくなります。誰が親を大切に思っているかを争うのではなく、できること、できないこと、費用を表にします。

項目決めること
平日の対応電話、通院、役所、緊急時の担当
週末の対応買い物、掃除、面会、交代時間
離れてできる支援予約、支払い、書類、定期連絡
費用介護サービス、交通、消耗品の分担
できないこと夜間対応、同居、退職など各自の限界

同居や近居をしている人だけが、時間も費用も背負う必要はありません。遠方の家族にも、予約や支払い、書類作成など、離れてできる役割があります。

会社に制度がない・相談を拒まれたときの窓口

「うちの会社では介護休業を取った人がいない」「忙しい時期だから無理」と言われても、前例がないことだけで法律上の制度を利用できなくなるわけではありません。

  • 育児・介護休業法の相談:都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)
  • 介護休業給付:勤務先を管轄するハローワーク
  • 介護サービス:お住まいの地域包括支援センター
  • 職場全般の労働相談:総合労働相談コーナー

相談するときは、就業規則、会社からのメール、制度申出書、勤務記録など、経緯が分かる資料を手元に置きます。会社と争うためではなく、使える制度と正しい手続きを確認するための相談から始められます。

それでも退職を考えるなら、辞めたあとの介護と生活を先に書き出す

制度やサービスを使っても続けられない場合、退職が必要になることもあります。ただし、退職すれば介護の負担が自動的に軽くなるわけではありません。時間が空いた分だけ、家族から任される介護が増えることもあります。

  • 退職後の毎月の収入と支出
  • 健康保険、年金、住民税の負担
  • 介護が長期化した場合の生活費
  • 再就職できる時期と希望条件
  • 自分が体調を崩したときの代替者
  • 退職後も利用する介護サービス

退職後の働き方として在宅ワークを検討する場合も、介護をしながら即座に生活費を得られるとは限りません。まずは介護中にできる在宅ワークの条件で、急な中断と収入の現実を確認してください。

介護離職を避けるための7日間の動き方

  1. 1日目:今週起きた介護対応と仕事への影響を書き出す
  2. 2日目:就業規則、社内窓口、介護休業給付を確認する
  3. 3日目:上司または人事へ個別相談の時間を依頼する
  4. 4日目:地域包括支援センターへ電話する
  5. 5日目:家族ごとの担当と、できないことを整理する
  6. 6日目:会社へ希望する制度と期間を相談する
  7. 7日目:2週間後に見直す勤務・介護体制を一枚にまとめる

一週間ですべてを解決する計画ではありません。退職するかどうかを一人で考え続ける状態から、会社と介護の専門職が同じ問題を知っている状態へ変えるための一週間です。

よくある質問

要介護認定がなくても会社へ相談できますか?

相談はできます。介護休業等の法律上の対象になる「要介護状態」は、介護保険の要介護認定と同じ意味ではありません。会社へは現在起きている介助や見守り、仕事への影響を伝え、必要書類と対象要件を確認してください。

パートや契約社員でも介護休業を取れますか?

雇用形態の名称だけで対象外にはなりません。有期雇用の場合は、介護休業開始予定日から93日を経過する日から6か月以内に契約が終了し、更新されないことが明らかでないことなどの要件があります。勤務先へ個別に確認してください。

介護休暇は有給ですか?

法律では、介護休暇中の賃金を有給にすることまでは定められていません。無給か有給かは勤務先の規程によります。年次有給休暇とは別の制度なので、取得可能日数と賃金の扱いを分けて確認しましょう。

上司に家族の病名まで話す必要がありますか?

勤務上の配慮や制度対象の確認に必要な範囲で伝えます。病名だけでなく、介助や見守りがどの程度必要で、勤務へどのような影響があるかが重要です。必要書類と個人情報の取扱いは、人事・労務へ確認してください。

今日することは、退職届ではなく相談の予約を入れること

今夜も介護の電話が来るかもしれない。明日の仕事にも遅れるかもしれない。そのような日が続けば、すべてを終わらせたくなるほど疲れてしまうのも無理はありません。

けれど、退職を決めるのは、会社の制度と介護サービスを確かめてからでも遅くありません。

今日は、会社へ「勤務を続けるための相談をしたい」と一通送ること。地域包括支援センターの電話番号を調べること。その二つだけで十分です。

ご家族を大切にすることと、ご自身の仕事や暮らしを守ることは、どちらか一方を諦めなければならない関係ではありません。一人で介護を完成させようとせず、続けられる仕組みを一緒に作ってもらいましょう。

介護と仕事の全体を整理し直したい方は、介護と仕事を両立できないと感じたときの選択肢も続けてお読みください。

参考資料

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この記事を書いた人

HSP、心身の不調、介護、育児。事情があるからこそ、仕事選びには慎重さが必要です。イエワークナビは、家でできる仕事を焦らず、現実的に探すための案内所です。

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